「開けゴマ」の由来と文化への影響

「開けゴマ」の由来と文化への影響
「開けゴマ」は、千夜一夜物語(アラビアンナイト)の1篇「アリババと40人の盗賊」に登場する呪文です。

この作品で最も有名なフレーズであり、これを唱えることによって岩の扉が開きます。

「なぜゴマなのか?」という問いに対しては「さやがはじける様子からの連想」、「ゴマを宝物と見立てた」、「言葉自体の霊的な意味」、「ゴマの神秘性」など、複数の説が出されているものの、決定的な答えは不明です。

「開けゴマ」を唱え、洞窟に入ったアリババ
▲「開けゴマ」を唱え、洞窟に入ったアリババ
 (アルベール・ロビダ筆)

「アリババと40人の盗賊」は、主人公のアリババと、その女奴隷のモルジアナが盗賊団と知恵比べの末に盗賊団を壊滅させる、という物語です。

アラビア語文学では悪知恵を題材とした物語が1つのジャンルを成し、「アリババと40人の盗賊」のモルジアナは、こうしたジャンルの主人公像をよく反映しています。

『千夜一夜物語』の中で最もよく知られた作品の1つですが、アントワーヌ・ガランがシリア人のハンナ・ディヤーブから聞き取って追加した物語とされ、アラビア語の原典は発見されていません。

「アリババと40人の盗賊」では、アリババが「開けゴマ」と唱えることにより、岩の扉が開き、中から盗賊の隠した宝物が出てきます。

ガランによるフランス語の原文では「ゴマよ、汝を開け」と表現されており、入り口を閉ざした岩でなく、ゴマそのものに開くことを命じる呪文となっています。

アラビア語では「イフタフ(開く)・ヤー(掛け声)・シムシム(ゴマ)」、英語では「オープン・セサミ」(Open Sesame)で「開けゴマ」です。

日本語の「開けゴマ」は以上の言語の直訳に由来し、ドイツ語や中国語でも各言語で「開けゴマ」に相当する表現が用いられています。

呪文を唱えると入り口が開く、というシーンは「アラジンと魔法のランプ」など、さまざまな物語に登場しています。

「開けゴマ」は、未知の扉を開き、新しいものと出会う、または新しいものに挑戦するという比喩表現にも用いられます。

特にアラブ世界やアラビア語と接触する際に用いることが多いですが、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部図書室の企画「ひらけ!!ゴマ!」のようにアラビアとは無関係のものにも用いられています。

情報科学分野では、LOGO派生の日本語プログラミング言語である「ドリトル」において、ポートを開くためのコマンドとして利用されたことがあります。

中華人民共和国のIT企業であるアリババ・グループの信用情報管理システム芝麻信用(ジーマしんよう、セサミ・クレジット)は「開けゴマ」に由来します。

実際に「開けゴマ」と唱えることで扉が開く装置を持つ施設もあります。

例えば、岐阜県関ケ原町にある胡麻の郷のゴマミュージアムには「開けゴマ」と唱えると開く扉があり、愛媛県伊方町にある四国電力の伊方(いかた)ビジターズハウスには開設当初「開けゴマ」で自動的に開く絵本が存在しました。

過去には酸性雨分取器「レインゴーランド」の自動蓋開け装置が開発され、その名称として「ひらけごま」が採用されています。


昨今は、コロナウィルスの影響で、扉に手を触れることが敬遠されています。

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参考文献;
胡麻の郷(ごまのさと)
https://bit.ly/2RymTMm
四国電力株式会社
https://www.yonden.co.jp/

Wikipedia;
開けゴマ
https://bit.ly/2E4FmNe
千夜一夜物語
https://bit.ly/3iG4dWM
アリババと40人の盗賊
https://bit.ly/3iBbAyx
アルベール・ロビダ(Albert Robida)
https://bit.ly/3iCkZGa
アントワーヌ・ガラン(Antoine Galland)
https://bit.ly/3c218Oe
LOGO (プログラミング言語)
https://bit.ly/2RyzoY2
ドリトル (プログラミング言語)
https://bit.ly/3hBj5V4
芝麻信用(ジーマしんよう、セサミ・クレジット)
https://bit.ly/2RxhwNe
胡麻の郷(ごまのさと)
https://bit.ly/3klaUxW
伊方発電所(いかたはつでんしょ)
https://bit.ly/2E4lNVh